家族や地域の歴史を伝える家

養蚕倉庫を修復して
ゲストハウスに

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岩下大悟さんは2014年から大日向で「山村テラス」という、サービス業を展開しています。茂来山の向かいに建つ小屋に滞在し、大日向の自然と暮らしの中に身を置く体験をしに、国内外から多くの人が訪れています。現在は、その小屋に程近い空き家を借りて住んでいて、敷地内のかつて蚕を飼っていた倉庫を修復 して、ふたつ目のゲストハウスを造っている最中です。

「築 年くらいの建物は単 に〝残っているもの〞ではなくて『家族や地域の歴史や暮らしの蓄積』で、だからこそ、ただ建て替えるのではなくて、その家の持つ風合いを大事にしたいんです」と 岩下さん。
床板は全部外して洗い、塗料を3回塗って、元通りの場所に張りました。
その一方で快適に過ごせるよう、屋根の内側に断熱材を入れて板を張り、窓は二重窓にします。

山村テラスを運営して発見したのは、電気も水道も通っていない小屋には、便利で広い家とは違う時間が流れているということ、そして、大日向には豊かで確かな暮らしがあること。
大日向の小屋は「とんがった滞在場所」で、そういう場所 を増やしていきたいと、今回の修復を始めたそうです。

「小屋も、古民家再生も、空間を造るだけでなく、そこでの過ごし 方の思想とか哲学とか、『確かに暮らして いること』をいろんな人とシェアしてい きたいと思っています。それが来る人に この地の文化を感じてもらうことになるん ですよね。自分が関わることによって、古い家に新しい命を吹き込めればうれし いです」。

修復が終わったら、この家に住んでいた5人姉妹を招いて、思い出を引き継ぐ会ができたらと考えているそうです。おばあちゃんたちの喜ぶ顔が楽しみですね。

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木枠の窓も、二重にして 断熱性を高める。

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開口部の建具は木工作家に依頼してあつらえた。

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洗われ、塗装されてよみがえった床がとてもいい雰囲気を醸し出す。ゆくゆくはここに大きなベッドを入れて、ゆったりと宿泊できる部屋になる予定。 天井の板は地元のカラマツを使い、 使用している椅子は旧中央小学校のもの。

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2016 年(古民家再生)完成

[家族]夫婦